大学生がアルバイトをすることについては、賛否両論ありますね。
アルバイトばかりに力を入れて、本来やりたい勉強がおろそかになってしまうなど、優先順位がおかしくなってしまうのはよくないけれど、アルバイトをすること自体は、私は大学生にとっては大切なことだと思っています。お金を稼ぎ、貯めるという以上に、将来に対する投資になり得るとも思います。
今回は、大学生がアルバイトをするメリットについて考えてみたいと思います。
「消費者」以外の立場から、経済に関わる経験になる
高校時代からアルバイトや事業経験がある人は別ですが、多くの大学生は今まで「消費者」の立場しか経験していないと思います。自分にとって必要で、魅力的だと思う物事にお金を払って、誰かが作ったモノを買い、誰かが行うサービスを利用する立場です。「大学生」という立場だって、大学に授業料を支払って、授業や諸々のサービスを受けるという意味では消費者ですよね。
一方で、世の中に存在する仕事には、必ず「生産者」の立場があります。具体的なモノ、商品ではない、無形のサービスだって、誰かがつくり、担っているという意味での生産者がいます。アルバイトだろうが正社員だろうが関係なく、何らかの仕事をしてお客さんから対価を得、そこからお給料をもらう、という経験は、「消費者以外の立場から経済に関わる経験」だと思うのです。
・どんな人が何に対してお金を払っているのか?
・その商品(サービス)が必要とされるのはどんな時なのか?
・その商品(サービス)を生産するのにかかるコストはどれくらいか?
・価格の根拠は何か?
・お客さんの満足度や仕事のやりがいなど、「お金」以外の仕事の価値にはどんなものがあるのか?
こういったことは、消費者の立場だけしか経験したことがないと、なかなか想像がつきにくいもの。しかし、企業に就職するにせよ、公務員になったり事業を興したりするにせよ、これが大学で学んだ先に出て行く場所なんです。
自分以外の消費者がどんな行動を取るのか、生産者はどんな価値を提供すれば選んでもらえ、喜んでもらえるのか。生産者側の当事者として、そういうことを考えることは大切だと思います。アルバイトの内容がどんなものであっても、消費者以外の立場で社会と関わることは将来の糧になるのではないでしょうか。
学生以外の人と関わることができ、価値観や人間関係が広がる
大学の立地や規模、学部にもよりますが、講義や部活、サークル活動など、大学を起点とする活動だけをしていると、関わる人が大学生かOBOG、教員だけに偏ってしまいがち。それでも全然構わない、という人はいいのですが、もっと他に友達をつくりたい、人間関係を広げたい、と思ったら、アルバイトはよい手段です。
アルバイト先には、店長さん、社員さん、経営者など、様々な立場の人がいます。アルバイト仲間の中にも、中卒や高卒で働いている人、夢を叶えるためにアルバイトで生計を立てている人、主婦の人、一度リタイアした人など、様々な人がいるはずです。それぞれの立場やバックグラウンドによって、仕事に対する考え方に違いも共通点もあるでしょう。大学を卒業して企業に就職する、というコース以外にも、様々なキャリアの築き方があるということも知ることができます。
特に、夏休み時期に募集がかかることが多い、リゾートバイトや農業バイトなどは、全国、あるいは全世界からたくさんの人が集まります。通いで働けるところもありますが、多くは仕事場のある地域に数週間〜2ヶ月程度住み込みで滞在して仕事をするので、仲間との仲も深まりやすい傾向があります。短期間でしっかり稼げ、休みの日には旅行気分が味わえるのも人気のポイント。留学生などが多く採用されているところもあり、普段の生活では出会えないような人と出会うことができます。
また、ベンチャー企業などでは、アルバイトやインターン経験者や社員からの紹介で採用活動を行っている企業も多くあります。実際に働いてみたり、社員と話してみたりして、企業の文化や仕事との相性を見極められるので、通常の新卒採用よりも確度が高いこともあるようです。こうしたチャンスには、大学の外にも人間関係を広げておかないと、なかなか巡り会えないもの。将来やりたいことが決まっている場合、それに近い業界や関連する業界と接点を持ってみるのもいいかもしれません。
今までの生活では関わることの少なかった価値観や生き方に触れ、自分自身の興味関心や人間関係が広がることは、お金を稼ぐことと同じくらい(人によってはそれ以上に)人生にメリットがあることだと思います。
自分を知るための材料が集まる
新入社員が就職後に悩んだり、早期に退職してしまう際に多い原因に、仕事とのミスマッチがあります。「思ってたのと違った」というやつですね。
なぜこういったことが起こるかというと、ひとつは「仕事や職場に対して事前に抱いていたイメージと現実にギャップがある」ということなのですが、もうひとつ「自分自身に対して抱いていたイメージと現実にギャップがある」ということも見逃せません。「できると思って始めてみたけど、やってみたら自分には向いてなかったみたい…」という、自分自身に対する自己イメージと現実のギャップです。
就職活動の際に、仕事を選ぶ基準のひとつになるのは、「こういうことをした時に楽しかった、向いていると感じた」という、今までの自分の価値観や経験。アルバイトにも様々な仕事がありますが、大学を中心とした生活とは違う経験をする中で、知らなかった自分の得意分野が見つかったり、得意だと思っていたけれど続けるのは辛いと感じることがわかったりします。
なんとなく辛そうなイメージがあった仕事でも意外と楽しめたり、逆に憧れていた仕事なのにガマンできないポイントが見つかったりもします。努力によって乗り越えられるギャップなのか、そもそも自分が選ぶべきではないことなのかの区別もつくようになるかもしれません。
こうして、アルバイト経験を通じて、自分を知るための材料をたくさん集めることができれば、就職活動の際や仕事を始めてからも、ある程度の指標を持った上でキャリアを築きやすくなります。
アルバイトをしないと自己理解ができない、という訳ではありませんし、アルバイト経験を通じて全てがわかるというものでもありませんが、今までやったことのないことを経験する中で、自分に関する新しいデータを集めることができるのは確か。
そのひとつの手段として、アルバイトを活用してみてはいかがでしょうか。