就職コンサルタント福島直樹です。
海外では新卒採用が存在しないため、新卒学生は社会人と競合します。負けないためにインターンシップに行かざるを得ません。前回はそんな海外事情を説明しました。
「福島さん、じゃあなぜ日本にだけ新卒採用があるのですか?」
今回はそんな疑問に答えてみたいと思います。
新卒採用の前提としての日本的雇用システムとは?
終身雇用、年功序列、企業内組合。これがジェームス・C・アベグレンにより1958年に指摘された日本的雇用システムの特質とよく言われています。そして新卒採用も第4の特質として広く理解されています。
戦前において、終身雇用、年功序列は今のように広く普及はしていなかったようです。いわゆる会社員はまだ少数派であり、農業、商工業などの自営業者が社会人の多数を占めていました。ゆえに農家の次男、三男は会社に就職するのでなく、自営商工業者の家に住み込み、丁稚奉公のような形で仕事を始めていたのです。映画「Always三丁目の夕日」のような世界をイメージすればわかりやすいと思われます。このようなブルーカラー的な零細企業において終身雇用、年功序列が成立するわけがありません(現代でも零細企業では勤続年数が短い傾向があります)。
日本で初めて年功賃金(年功序列)が提唱されたのは、1922年であり、戦艦大和で有名な呉海軍工廠において労働者の共産化を防ぐためだったと言われています(濱口桂一郎「新しい労働社会」より)。
終身雇用、年功序列は数十年の歴史しかない
そして戦後の高度経済成長期において、企業側にとっても社員側にとっても、終身雇用、年功序列という日本的雇用システムは合理性があり広く普及したと考えられます。
市場が拡大し、売上、利益ともに順調に上がっている時に、社員が終身雇用で長期間働いてくれることは企業に大きなメリットがありました。海外のようにどんどん転職されてしまったら人手不足で困ってしまいます。またそのためには若い時はやや少なめの給与にし、中年以降に高い給与を払う方が長く働くインセンティブが働きます。これが年功序列賃金制度です。
ここで重要なことは、日本的雇用システムは比較的最近普及したということです。たかだか数十年の歴史しかありません。インターネットの書き込みなどで、終身雇用、年功序列は日本人の民族性や精神性に根ざしたものだ、という指摘がありますが、ほぼ根拠のない妄言と言っていいでしょう。
では終身雇用、年功序列をはじめとする日本的雇用システムにとって、新卒採用はどのようなメリットがあったのでしょうか? これついては次回、説明したいと思います。