就職コンサルタント福島直樹です。
・前回学んだこと→日本のメンバーシップ型雇用の③つ目のデメリット → 長時間残業、全国転勤は終身雇用を維持するための必要悪である。
・今回学ぶこと→ 若者は終身雇用などについてどう考えているのか?の予定だったのですが、メンバーシップ雇用④つ目、⑤つ目のデメリットについて書かせてください!すみません。
メンバーシップ型雇用のデメリット④夫婦共働き、仕事と子育ての両立が難しく少子化が進みやすい
最近の若い夫婦世帯では共働きが多く、結婚、出産後も妻がフルタイムの正社員で働くことは珍しくありません。
なぜ共働きが増えているのでしょうか?約27万人を対象とした「転職サービスDODA平均年収ランキング」によれば正規雇用、ホワイトカラーのサラリーマンの平均年収は、下記のように減少しています。
460万円(2008年) → 442万円(2016年)
※転職サービスDODA平均年収ランキング(調査対象:主にホワイトカラー職種の男女正社員約27万人)
アベノミクスで景気は良くなった、企業業績は好調だとよく言われますが、サラリーマンの給与は実は下がっているのです。しかも非正規でなく、恵まれていると言われる正規雇用、ホワイトカラーの数字です。
このような状態ではGDPの半分を占める個人消費が回復するはずもありません。結婚後の将来に漠然とした不安を感じ、妻が出産後も働き続けるのは当然ですね。実に合理的な賢い対応だと思います。
正社員になりたいが非正規から抜け出せない人は約300万人
さらにご存知の通り非正規雇用も増加してきました。厚生労働省の調査から次のような事実がわかります。
労働者全体に占める非正規雇用の比率
20.3%(1994年)→37.5%(2016年)
非正規雇用者数 2023万人(2016年)
うち不本意非正規者数 297万人(2016年)
(「非正規雇用 現状と課題」厚生労働省2016年)
人手不足により直近では非正規より正規の増加率が高いという事実もあります。しかしそんな現在でも正規雇用に就きたいが就けないという不本意非正規雇用者は約300万人もいるのです。
なぜこんなに非正規雇用が増えたのでしょうか?様々な要因が指摘されていますが、1つの有力な説は正社員の高い給与と終身雇用を維持するため、企業が非正規雇用を増やしてバランスを取ったという考え方です。
例えば国内の工場などで人件費の高い正社員を雇わずに、派遣社員や契約社員、請負で対応した企業は実に大量に存在します。
つまり正規のために非正規が犠牲にされたという考え方。ということは次のように言えるのかもしれません。
メンバーシップ型雇用のデメリット⑤正社員を守るため非正規が犠牲にされ社会的な分断が起きてしまう(非正規同士では結婚、出産にも難しさがつきまとう)
このような非正規の困難を見ていれば、いつ自分たちがこうなってしまうかわからないと不安に感じる正社員は少なくないでしょう。これも妻が働き続ける1つの要因なのかもしれません。
話を共働き、子育てに戻します。前回、長時間残業は終身雇用維持の必要悪と書きましたが、夫婦ともに長時間残業が続いたり、夫が全国転勤になったらどうなるのでしょうか?
出産後の乳児を、質の高い保育所に預けることができなければ妻は会社を辞めざるを得ないでしょう。
夫婦が共働きをつづけながら順調に子育てをすることは現状の仕組みでは簡単ではありません。これでは子供をたくさん持つことは難しいですね。少子化が改善されない理由がわかります。
会社が社員の終身雇用を維持してくれることはありがたいことです。しかしそのための社会的コストはかなり高くつくことも事実なのです。
ではそんな終身雇用について若者はどう考えているのでしょうか?次回をお楽しみに。