就職コンサルタント福島直樹です。
・前回学んだこと→日本のメンバーシップ型雇用には下記の2つのデメリットがある。
①自分らしいキャリア形成が難しい(社員の立場)
②成果主義と相性が悪い(経営者の立場)
・今回学ぶこと→メンバーシップ型雇用の3つ目のデメリット③長時間残業、全国転勤について
日本のメンバーシップ型雇用デメリット③長時間残業と全国転勤がなくならない(社員の立場)
まず残業の問題からいきましょう。このところブラック企業、長時間残業、過労死、過労自殺などの言葉がメディアやネットで取り上げられ批判されていますね。
政府も何らかの対策を立てようとしています。厚生労働省は2017年5月に、法令違反などのブラック企業一覧334社を公表しました。
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/170510-01.pdf
(厚労省「労働基準関係法令違反に係る公表事案」)
また政府の「働き方改革実現会議」で残業の上限を規制する方針が打ち出されています。現状の労働基準法、36協定で実質的に無制限に残業させられる仕組みにやっとメスが入るようです。
しかし私は思います。メンバーシップ型雇用、つまり終身雇用を止めない限り、これら対策はうまくいかないと。なぜでしょうか?
終身雇用を維持する上で残業は必要悪
終身雇用を維持することは経営的には実はリスクが高い行為です。というのは一度採用した社員は簡単には解雇できないからです。現状の裁判所の判例では「単に仕事ができない」という理由だけではクビにできないのです。
一方、景気には必ず波があります。好景気もあればリーマンショックのような大不況もやってきます。そんな時に全社員の雇用を維持するのは、これまた簡単なことではありません。
つまり好景気で忙しい時は残業が必要な程度の数しか社員を雇わないことが合理的なのです。不況期には、その方が社員を解雇しないですむ可能性が高いからです。つまり終身雇用を維持するためには残業が必要悪なのです。これは衝撃的な事実です。
戦後から現在まで企業が不況期にどんな雇用調整をしてきたかについては下記をみてください。
厚労省「平成25年版 労働経済の分析」(165p)
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/13/dl/13-1-5_02.pdf
このデータからは「残業時間の調整」が最も多いことがわかります。つまり残業を見込んだ数でしか社員を採用してこなかったということです。
また2000年代から増えているのが「配置転換」という雇用調整方法です。この中には前回指摘した職種の異動が入りますが、同時に全国転勤を強制されることもあります。
「定年まで面倒見る(終身雇用)ので残業と全国転勤、職種異動はよろしくお願いします」
「わかりました」
このような企業と社員とのバーター取引こそが日本的雇用システムの本質なのです。ゆえに一部の実質的に終身雇用が崩壊している企業において、残業と全国転勤、職種異動が強制されるのは完全にアウトなのです。まさにブラック企業です。互いの信頼関係の裏切りであり、社員があまりにかわいそうです。
さてこのような状況に対して最近の若者は何を考えているのでしょうか?特に終身雇用についてどう感じているのか?を次回説明します。お楽しみに。