第9回 実は素晴らしい!?日本の就活 ~その⑥~

就職コンサルタント福島直樹です。

●前回学んだこと→日本の雇用形態はメンバーシップ型が中心であり、ゆえに終身雇用、年功序列、企業内組合、新卒採用が成り立ち、みなさん若者の失業率が低い。

●今回学ぶこと→日本独特のメンバーシップ型雇用ってデメリットはないの?

 

  みなさん若者にとってメリットの多いメンバーシップ型雇用ですが、一方でデメリットがないわけではありません。主に3点取り上げたいのですが、今回は社員と経営者の2つの立場から説明します。

 

メンバーシップ型雇用のデメリット①自分らしいキャリア形成が難しい(社員の立場)

日本では、入社後も職務(仕事内容)が変わることがよくあります(ジョブローテーション)。例えばマーケティングを担当していた社員がある日から突然、人事に異動することはそう珍しいことではありません。

「私はマーケティングのプロになりたいので納得できません」

そんな個人の都合は聞いてもらえないことが多いもの。これでは社員は希望する仕事でスキルアップできず、キャリア形成上、不利になります。転職においてもハンデになる可能性もありますね。

 だからこそ企業は暗黙の了解として終身雇用を保障するわけです(ちなみに終身雇用は雇用契約として明文化されてはおらず、あくまで企業と社員の暗黙の了解です)。

別の見方をすれば、企業は社員の終身雇用を維持するために、転勤もふくめ会社都合で部署異動させているのです。その分、社員の自律的なキャリア形成は犠牲にされているということになります。

 

デメリット②成果主義と相性が悪い(経営者の立場)

経営者はできるだけ効率的な会社運営をしたいと考えています。成果を上げた人に多く報い、成果を上げない人には給与を少なくした方が、前者のモチベーションと後者の危機感が上がり効率が良いと考える人もいます。これが90〜00年代に流行した成果主義の考え方です。

ところがメンバーシップ型雇用はこの成果主義とも相性がよくありません。

例として、新卒時22歳から5年間経理一筋の田中さん(27歳)と、10年間営業を続け経理に異動した村上さん(32歳)を比較してみましょう。経理として仕事ができるのは田中さんです。よって厳密に成果主義で評価をすれば32歳の村上さんより27歳の田中さんが高評価となり、給与、ボーナスも高くなるはずです。

これって最近話題になっている同一労働同一賃金の一例です。成果主義と同一労働同一賃金は実は同じことなのです。現状は非正規と正規雇用の差をなくすために言われていますが、もし正規雇用の中で同一労働同一賃金を厳密に適用すれば、混乱は必至でしょう。

「会社の都合で異動させておいて、後輩より評価も給与も低くなるってひどくないですか?営業のままが良いです。異動は嫌です」。

 事例の村上さん(32歳)が怒るのも当然ですね。こんなおかしなことを続けていたら、社員はどんどん辞めるでしょう。

 つまり厳密な成果主義では社員の部署異動がスムーズにできません。ということは終身雇用の維持も難しくなります。同一労働同一賃金、つまり成果主義ではなく、年功序列の方が終身雇用と相性が良いことがわかります。

 経営者の立場からすれば、時代や環境に合わせて、評価や人事制度を変えにくい点がメンバーシップ型雇用の課題ということになります。

 

 そして3つ目のデメリット、残業の問題は次回、説明します、お楽しみに。

 

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