なぜ学歴フィルターは存在するのか?その17

就職コンサルタントの福島直樹です。

 

・前回の内容;マルクスから考える学歴の使用価値と交換価値を紹介しました。

・今回の内容:海外と日本の学歴評価の違い(ジョブ型とメンバー型)を考えます。

 

海外のジョブ型雇用  日本のメンバーシップ型雇用

前回は、理系と海外では主に学歴の「使用価値」が重視されるという話をしました。

このような話を聞けば、学歴フィルター、学歴差別とは日本特有の仕組みのような気がするかもしれませんね。

 

「欧米は成果主義、実力主義なので学歴は関係ない。早く日本もそうなるべきだ」

実際にネットではこのようなコメントをよく見かけます。時々著名人でも似たような発言をメディアでしていますが、これは大きな勘違いです。

 

学歴差別は米国や欧州の方がよりシビアに活用されています。

 

米国有力企業では大学名により初任給が変わってくることは珍しくありません。このようなことは日本では考えられませんね。

「A君は東大出身だから初任給600万円(年収)、B君は中堅大なので300万円(年収)です」

 もし日本でこんなことが起きたら大炎上です。

 

新卒採用という仕組みが存在せず、大格差社会である米国では普通に起きている世界ですが。

 

欧米と日本、それぞれの学歴差別のちがい

日本と欧米では学歴差別の目的が違います。

 

欧米では主に使用価値が高いので学歴を重視します。

一方日本では使用価値より交換価値が高いので学歴を重視します。同じように見える学歴重視でも意味合いが違うのです。

 

これはそれぞれの雇用システムの違いが原因です。以前にも書いたように海外では職務を決めたジョブ型雇用が中心であり、日本では職務未定のメンバーシップ型雇用が新卒採用の中心となっているからです。※注

 

例えば、欧米のジョブ型では、マーケティング職の人はインターンシップを含めマーケティングの経験、知識を大学、大学院で学んだことが評価され採用されます。

GPA(大学での学業成績)の数値が日本以上に重視されるのもそのためです。使用価値が高いとはそういう意味です。

入社後は基本的にマーケティング業務を担当し、他部署に異動させる権限は会社にありません。その分、専門性を磨き転職もしやすくなります。ただ何らかの理由でマーケティング業務が消滅すれば、自動的に解雇されます。

 

日本のメンバーシップ型は職務を決めずメンバーとして社員を受け入れ、終身雇用を社員に提供する代わりに職種異動、勤務地異動、残業が求められるというものです。

そこで要求されるものの1つは、地頭の良さであり、学校歴が内定と交換されます。つまり地頭の良さの指標としての学校歴に交換価値を見出すのです。

※注 ジョブ型、メンバーシップ型については、濱口桂一郎「新しい労働社会」(岩波新書)と、田中博秀「現代雇用論」(日本労働協会)に詳細が書かれています。

 

図表1 学歴差別が行われる目的の違い

 

使用価値としての学歴

交換価値としての学歴

欧米(ジョブ型雇用)

◎評価する

 

日本(メンバーシップ型雇用)

 

◎評価する

 

 このように一見古い経済学、社会学、哲学の理論である、使用価値、交換価値という切り口で学歴を見ていくと、理系、文系の違いはもとより、欧米と比べた日本的雇用システムの特徴も理解できるようになります。

 

教養は役に立ちます。そして教養を学ぶことができるのは主に大学です。

高専や専門学校を含めた高等教育機関の中で、大学固有の価値がそこにあると私は思います。

 

 

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